シリーズ「留学記」 あなた、修行したの?

    February 24, 2015

    2013年、ベルリンでの話。

     

    ベルンの大学院を出てから、ドイツの学校で勉強を続けオーケストラを受けようと思った僕は、受験準備としてベルリンに渡った。ところが、引っ越して2ヶ月ほどで酷いスランプにはまってしまった。

    狭くて響く部屋で、隣近所に遠慮しながら練習していたら、どれくらいの音量で吹けばいいのかすらわからなくなってしまった。ホールで吹く機会も、ピアニストと合わせる機会も無かったので、このまま人生オシマイなのかもしれない・・・そんなことを毎日考えていた。

     

     

     

    ベルリンにはドイツの学校に入る準備段階として、一時的に滞在する人が多い。

    理由はこんなところだと思う。

     

    ① ビザがおりやすい。

     

    僕の場合は、語学学校の在籍証明(3ヶ月分)で2年のビザがおりた。

     

    ②日本人留学生が多く、情報が集まりやすい。

     

    ③良質なコンサートが、安価で聴ける。

     

    ベルリンフィルも立ち見席なら、1000円強で聞ける。

     

     

    壁崩壊後に物価が急上昇したとはいえ、まだまだ生活しやすく活気に溢れた都市、ベルリン。

    住んでいた1Kの部屋も、狭くは無いけれど、練習のことを考えると決して満足な広さではなかったので、

    前に教会で練習していたと言っていた人の話を思い出して、近所の教会にアポなしで訪ねてみることにした。

     

    まず1件目。

     

     

    入り口がわからないので却下。

     

     

    2件目。

     

     

     

    よく行くケバブ屋の向かいにある、大きな教会。

    螺旋階段を登り、事務所のようなところにたどり着く。

     

     

    ・・・人の気配がしない。

     

    だんだん怖くなってきたので退散する。

     

     

     「ヤクザケバブくれよ!」というと、いつも大盛りにしてくれる。ONE PIECEが好きらしい。2.8ユーロ。

     

     

    3件目。

     

     

    かなり家から離れてしまった。けれど、ここは入り口もはっきりしているし入りやすそうだ。

     

     

     

     

     

     

    中の事務所のベルを鳴らすと

     

     

    「ワウ!!!!バウバウバウバウ!!!!!!!」

     

     

    と吠える猛犬を携えた、お婆ちゃんがでてきた。

     

    「なんのようかね?」

     

    つたないドイツ語で自分が練習場所に困っている事、もし出来れば教会で練習させてほしい旨を伝えると、

     

     

    「ボスが不在だから、明日いらっしゃい」

     

    と、日をあらためることになった。

     

     

     

    次の日に尋ねてみると、ブロークン・イングリッシュを喋るおばちゃんが出迎えてくれた。

    どうやらこの人がこの教会のボスらしい。

    もう一度、昨日説明したことを繰り返し話す。

     

     

    すると、すんなりとOKの返事。

    タダで貸すかわりに、教会の託児所(KITA)でやっている児童合唱の音とり練習をオーボエでやってほしいとのこと。

    喜んで引き受けた。

     

     

    そしてここからおばちゃんの勧誘タイムが始まる。

     

     

    おば「ところで、あなた・・・・・仏教徒?」

     

     

    うるし「ええ、はい。」

     

     

    おば「でもそれは習慣的なものでしょう。あなた自身はどうなの。」

     

     

     

     

    猛犬「hshs」

     

     

     

    うるし「でも、大切なものです」

     

     

     

    おば「あなた、修行(practice)したの?」

     

     

    うるし「いや、あれはいわゆる専門的なジョブ・トレーニングでして。」

     

     

     

    5分ほどこんなやり取りをして、おばちゃん(と猛犬)は

     

     

    「好きになさい。」

     

     

    と解放してくれた。

     

     

     

     

     

    こうして、とりあえず満足に音を出せる場所を確保した。

    留学中一番の思い出の一つ。

     

     

     

     

     

     

     

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