2011年、ベルンの大学院の2ゼメを向かえた頃、あるオーケストラの研修生のオーディションを受けることになった。
オーケストラに就職するには、基本的にオーディションを勝ち抜かなければならないのだが(そのあとさらに試用期間が1年ある)、殊にドイツではチョーキビシー書類審査がある。
こんな感じ。
①まずは空いているポストを探す
これはネットかSCHOTT出版のDas Orchester(2ヶ月に1回発行される業界雑誌 9.50EUR)にオーケストラが
求人広告を出してるからそれをチェック。金が無いので自分はネット派。
1回買ってみた。

隅々までチェック

ユニークな表紙
②履歴書と諸々を送る
たまにEU圏外の人お断りのオケがあるので、募集要項を確認してから履歴書、ビザのコピーに一筆添えて送る。
同時に幾つかのオケで求人がある時はこの一筆書のテンプレートを弄るのが結構な手間。
③練習しつつ招待状を待つ
オーケストラの人は送られてきた履歴書(師事してる先生、コンクール歴、エキストラ歴)を見て、
脈が有りそうな人にオーディションへの招待状を送る。
曲は殆どの場合モーツァルトのオーボエ協奏曲+オケスタ(オーケストラスタディ。オーケストラの曲のオーボエパートで難しい所を集めたやつ)なので、その間招待状が来るのを信じて練習。
研修生、オーケストラアカデミーのオーディションの場合、基本的には全員に招待状がくる。僕自身が例外的にもらえなかった事もあります。

ベルリンフィルのオケアカのオーディションの招待状
④運良く招待状が着たら・・・
バス、電車、場合により飛行機、ホテルを予約して本格的に練習する。
だいたいオーディションまで1ヶ月切ってる。オケスタの曲が10~20曲くらい指定されるので、そちらを中心に。
大体出る曲決まっているけれど、歌劇場のオーディションでは得体の知れない曲が出たりする。
メノッティなど近代・現代系のオペラ、ドニゼッティのマイナーなのとか。
あ、学校の事務に招待状を見せると、授業休めます。相変わらず不機嫌そう。
「頑張って」くらい言ってくれてもいいじゃない。
書類審査で落ちた場合・・・
大抵の場合、お祈りメールすら来ない。だから1週間前になっても連絡がない
場合は、察して予定を入れる。さすがにこれはどうかなと思いますよ。何処のどいつだとは言いませんが。
⑤オーディション当日
田舎の場合は駅で見かけたオーボエっぽい楽器ケースもった人についていくと、大抵会場につけます。
日本のオーケストラと違って、伴奏者が用意されている場合が多いのでお財布には優しいです。
控え室で番号を与えられた後に、順次呼ばれてモーツァルトを1分くらい演奏。
大体カーテンがあって審査の楽員からは誰が吹いているか(たぶん)わからないようになっている。
勢い良く「チーーーーン」とベルが鳴って終了。
全員が吹き終わると、すぐに幾つかの番号(全受験者の1~3割くらい)が呼ばれ、今呼んだ人達次は
この曲を吹いてくださいと言われる。
業界ではこれを「2次に進んだ」という。
良さそうな人がいないと、ここで全員脱落の場合もある。逆に延々と7次くらいまでやる場合もあるようです。
最後カーテン開けたらぐるっと取り囲むように全団員聞いてたとかね。
大体オーディションに来てる連中は顔見知りなので、「ピアニストテンポ速かったよねシャイセ(Shit!の意)」
とか言いながら昼からビール飲んで帰る。で、また①から繰り返し。
とまぁこんな感じなのですが、書類審査の時にオーケストラの研修生をやった経歴があると、
プロオケの招待状を貰いやすくなると言われています。
そもそも研修生とは、1年ないし2年間オーケストラに在籍させてもらって「オーケストラの伊呂波」
を学ぶとても良いシステムです。お金も頂けますし、無料で楽員のレッスンも受けられます。
そんな理由で僕も研修生のオーディションを受ける事にしたのですが・・・
つづく